

スピード、決済、ポップアップ、スーパーアプリ、ファン参加。日本からは見えにくい5つの変化を通じて、いまの韓国市場を分かりやすく紹介します。
韓国市場の「いま」。知っておきたい5つの変化
スピード、決済、空間、IT、そしてファン。いまの韓国市場を動かしているもの
韓国を訪れたことがある方や、韓国の商品・サービスに関心のある方なら、今回紹介する内容の一部はすでにご存じかもしれません。
それでも、海外で事業を考える際には、まず「その市場のいま」を知ることが大切です。
私は20年以上、日本と韓国の間で企業や商品、人をつなぐ仕事に携わってきました。そのなかで感じるのは、韓国は日本で知られているイメージ以上に、日常生活とビジネスの仕組みが速いスピードで変わる市場だということです。
どちらが優れているという話ではありません。日本には日本の良さがあり、韓国には韓国ならではの動き方があります。
今回は、いまの韓国市場を理解するための5つの変化をご紹介したいと思います。気軽に読んでいただき、韓国をもう少し身近に感じるきっかけになればと思います。
1.K-ビューティーとファッションを支える「速いものづくり」
日本でK-ビューティーやK-ファッションというと、オリーブヤングやMUSINSAで人気の商品、人気アイドルを起用した広告などを思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、その人気を支えているのは有名ブランドやマーケティングだけではありません。
韓国には、アイデアを短期間で商品に変えるための、小回りの利く企画・製造ネットワークがあります。
ファッションでは、東大門を中心に生地、縫製、卸売、物流などの事業者が集積しています。化粧品では、COSMAXや韓国コルマーをはじめとするOEM・ODM企業と、容器、原料、デザイン、マーケティング企業が連携しています。
こうした分業体制によって、企画から試作品、製造、販売までを比較的速く進めることができます。
日本では、十分に検討して完成度を高めてから市場に出す方法が一般的です。一方、韓国では、まず商品を市場に出し、消費者の反応を確認しながら改善していく方法がよく見られます。
K-ビューティーやK-ファッションの強さは、華やかな広告の後ろにある「ものづくりの速さ」にも支えられているのです。
2.カード社会から、スマートフォンで完結する社会へ
「韓国はクレジットカードが使いやすい国」というイメージは、今も間違いではありません。
韓国銀行の2024年調査でも、利用件数で最も多い決済手段はクレジットカードで、全体の46.2%でした。つまり、現金やカードがなくなったわけではありません。
ただし、実際の生活を見ると、決済の中心は実物のカードからスマートフォンへと移りつつあります。
NAVER Pay、Kakao Pay、Samsung Walletなどを使い、スマートフォンで支払いからポイント、クーポン、本人確認までを済ませる人が増えています。
飲食店では、テーブルにある端末やQRコードから注文し、そのまま決済する風景も珍しくありません。無人店舗やアプリでの予約、順番待ち、配達なども日常の一部になっています。
便利である一方、韓国の電話番号や銀行口座、本人認証が必要なサービスもあります。そのため、高齢者や外国人にとっては、かえって利用しにくい場面も生まれています。
韓国のデジタル化を見る際には、便利さだけでなく、変化の速さについていけない人を生み出す側面も理解しておく必要があります。
3.商品を買う前に、空間を体験する「ポップアップ文化」
韓国では、商品を販売する場所の考え方も大きく変わっています。
その代表が、ソウルの聖水洞や弘大、汝矣島などで相次いで開かれているポップアップストアです。
以前のポップアップストアは、新商品を短期間販売する臨時店舗というイメージでした。現在は、ブランドの世界観を体験してもらうメディアのような役割を持っています。
商品を並べるだけではありません。建物全体を装飾し、展示やゲーム、限定グッズ、写真撮影スペースなどを設けます。来場者は商品を買うだけでなく、その空間を楽しみ、写真や動画をSNSで共有します。
2024年上半期に開かれた677件のポップアップストアを対象とした民間調査でも、最も開催数が多かった地域は聖水洞でした。聖水駅の年間乗降客数も、2014年の約1,854万人から2024年には約3,222万人へ増えています。
もちろん、ポップアップストアが通常の店舗をすべて置き換えたわけではありません。しかし韓国では、長期間店舗を構える前に、短期間の空間で市場の反応を確かめる方法が、重要なマーケティング手段になっています。
商品そのものだけでなく、「行ってみたい」「写真を撮りたい」「誰かに伝えたい」と思わせる体験まで設計する。これが、いまの韓国の空間ビジネスです。
4.ひとつのアプリが、日常生活の入口になる
韓国では、ひとつの目的で始まったアプリが、生活のさまざまな場面へ広がる動きも目立ちます。
たとえば「당근(タングン:日本語(ニンジン)」は、地域内の中古品取引から始まったサービスです。現在では、近隣情報、アルバイト、住まい、地域店舗の案内など、暮らしている地域と人をつなぐハイパーローカル・プラットフォームへと発展しています。
「Toss」も、簡単な送金サービスから始まり、銀行、証券、保険、決済、通信などを一つのアプリで利用できる金融プラットフォームへ成長しました。
日本でもLINEやYahoo! JAPANなど幅広いサービスを提供するプラットフォームがありますが、目的に応じて複数の専門アプリを使い分ける場面も多いと思います。
韓国では、利用者が集まったアプリに新しい機能が次々と追加され、一つのアプリが生活の入口になるスピードが非常に速いのが特徴です。
韓国市場へ進出する企業にとっては、自社サイトをつくるだけでは十分ではありません。韓国の消費者が日常的に使うアプリやプラットフォームのなかに、商品やサービスとの接点をどうつくるかが重要になります。
5.ファンは「見る人」から「一緒につくる人」へ
K-POPやK-ドラマの成功は、大手芸能事務所の育成システムや制作力、グローバルマーケティングだけで説明されることがあります。
しかし、韓国コンテンツのもう一つの大きな特徴は、ファンが単なる消費者ではなく、作品やアーティストを育て、広げる役割を持っていることです。
オーディション番組では、視聴者の投票がデビューメンバーの選定に影響します。ファンが資金を集めて地下鉄広告や誕生日広告を出したり、SNSで翻訳や情報発信を行ったりすることも一般的になりました。
WeverseやDearU bubbleなどのファンプラットフォームでは、アーティストの投稿やライブ配信、有料メッセージ、商品販売などが一つにつながっています。
ウェブトゥーンやウェブ小説でも、閲覧数やコメント、評価など、読者の反応を確認しながら作品が展開されていきます。すべてのストーリーが読者の意見で変わるわけではありませんが、反応が可視化され、制作やマーケティングの判断材料になるスピードは非常に速いといえます。
韓国のコンテンツビジネスが販売しているのは、完成した作品だけではありません。
「自分もこの人や作品の成長に参加している」という感覚が、ファンの強い行動力と継続的な応援につながっています。
まず「いま」を知ることから始める
ここまで紹介した5つの変化には、共通点があります。
それは、まず始めてみること、消費者の反応を早く確認すること、そして反応を受けながら次の形へ変えていくことだと思います。
韓国市場は変化が速いため、数年前に成功した方法が、そのまま現在も通用するとは限りません。日本で知られている韓国のイメージと、実際の生活や販売現場に違いがあることもあります。
すでにご存じの内容があったとしても、まず現在の韓国市場を知ることには意味があります。そして、自社の商品やサービスを韓国市場に顧慮し、小さく試しながら反応を確かめていくことが大切です。
GIBUNJOA JOURNALでは、これからも商品、ブランド、ものづくり、流通、韓国進出などをテーマに、現場で見える韓国と日本の「いま」をお伝えしていきます。
次回は、韓国進出を最初から大きく始めるのではなく、小さなテストから可能性を確認する方法についてお話ししたいと思います。
日本の良いモノを韓国へ、韓国の良いモノを日本へ。
宋 基東
参考資料
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韓国銀行『2024年 支払手段およびモバイル金融サービス利用行動調査』
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ソウル交通公社「ソウル地下鉄1~8号線輸送統計」
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ソウル市・ソウル特別市関連公開資料
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各社公式発表・サービス情報
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